紳士な若頭の危険な狂愛

(美東さんはこういう世界にいるんだ)

今まで関係ないと思っていたニュースが突然身近に感じてしまう。
彼だって組長になる。
敵対する組もあるというのなら、このような危険を常に感じているのだろうか。

そしてその夜、美東さんが撃たれる夢を見た。
私と手をつなぎ、優しく微笑みかけていた彼が銃弾に倒れる夢。
あまりの生々しさに目を覚まし、顔からは汗が流れていた。
彼に返事をするまでもう一週間を切った。
既に答えは出ている。
ただ別れが待っている以上、未だに覚悟が出来ていなかった。

『綾菜さん!今度このお店行こうよ!
人気のスィーツのお店なんだ。
お父さんとは絶対行きたくないし』

『そこに父さんが混ざるのは駄目なのかい?
二人の分は奢るから』

『絶対いや!
綾菜さん、約束ね!』

昨日帰り際に絵理奈ちゃんがスマホを見せながら嬉しそうに言っていた笑顔が浮かぶ。
社長からは、これからも迷惑かけるねと悲しそうに言われた。

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