紳士な若頭の危険な狂愛
「綾菜」
知らずに俯いてしまっていた。
笑顔で顔を上げると、彼が私の前で片膝をついてぎょっとする。
「義隆さん!汚れますから!」
「何度も言っていますが綾菜がこちらの世界に来てくれた以上、狂おしいほどの愛を一生貴女に捧げることを誓います」
私の手を持って、彼はうやうやしく頭を下げた。
まるで格好いい王子様が求婚するかのように。
「私だって義隆さんを幸せにしますよ」
「既に十分すぎますけどね。
私の方はまだ綾菜に与え続けたいですが」
「それなら外から見えるとこにキスマークする癖、いい加減止めて下さい。
式場のスタッフさんに苦笑いされながらコンシーラー塗られたんですから」
「それは失礼しました。
見えないところというのがいまいちわからないものですから」
じろりと睨むと、義隆さんは楽しげに笑った。
ドアがノックされ、そろそろご準備をと声をかけられた。
「行きましょうか」
立ち上がった義隆さんが私に手を差し出す。
その手を取って私もゆっくりと立ち上がった。
きっと社長は私の選択を、愚かな行為だと思っているだろう。
だけど愚かで良い。
二人で歩く真っ白なバージンロードの先に何があったとしても、義隆さんの側にいる世界が私の幸せなのだから。
END