紳士な若頭の危険な狂愛


「大丈夫ですか?」

「はい。助けていただきありがとうございました」

私は深々と頭を下げた。
正直頭の中は混乱している。
だって目の前にいる人は、本当のヤクザと言うことになる。
年齢は三十代くらいだろうか。
見た目はどこかの若社長と言われた方が納得する。

「こんな場所で申し訳ありませんが、どうしてあの男に脅されていたか理由を教えていただけますか?
こちらとしても勝手に組の名前を使われ、一般人を脅していたという事案を放置するわけにもいかないので」

困ったような顔をする彼に、少し悩んだ後事情を話すことにした。
あの男はおそらく他にもカモにした女性たちがいるはずだ。

彼は頷きながら話を聞いてくれた。
こんなに安心した気持ちで男性と話した記憶は無い。
本当にこの人はヤクザなのだろうか。
時折、ふわりと彼から香水の香りが私の鼻腔をくすぐる。
スパイシーな香りの中に、ほんのり甘そうな香りが混じる良い香り。
媚薬でも入っているのかと思うほどに、惹きつけられてしまう気がした。

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