紳士な若頭の危険な狂愛
「なるほど、よくわかりました。
しかしたまたま私が通りかかったから良かったものの、非常に危なかったのですよ?」
「申し訳ありません」
本当にそうだ。
彼が助けてくれなかったら私はどうなっていたかわからない。
「ですが」
またうつむいてしまっていた顔を彼の声で顔を上げる。
「貴女の行動は格好いいものだと思います。
私は、好きですよ」
優しげに彼の目が弓なりになる。
どくん、と自分の胸が音を立てたことに私は気づいてしまった。
彼は私を真っ直ぐに見ていた。
その視線を嫌だと思えない。むしろその瞳を独占していたい。
「お嬢さんのお名前を伺っても?」
「市谷綾菜です」
一切疑うこと無くすぐに名前を伝えた。
漢字まで説明すると、良いお名前ですねと微笑まれて私の頬は熱くなってしまう。
彼は上着のポケットから財布を出して、私にお札を何枚か握らせた。
開いてみると5万円もあって驚く。