冷酷御曹司の〈運命の番〉はお断りです
「アルファなら番の解除も可能だ。別に一生の責任を取れというつもりはない。犬に噛まれたと思って忘れてくれ。精神的苦痛を被ったというなら、慰謝料だって支払う」
「噛むのは私なんですけど」
しょうもないツッコミを入れている場合じゃない。
私は必死に足をバタつかせ、何とか拘束から逃れようとした。
「こら、暴れるな」社長が子供を宥めるように言って、自分の膝で私の足を押さえる。結果として、より強く捕まっただけだった。
「一生! 一生なんですよ!」
私がアルファだと判明した時、国から専門の指導員が派遣されてきて、みっちり講習を受けさせられた。
特に番制度については詳しく説明された。オメガの――他人の人生を、致命的に破壊する危険があるからだ。
手も足も動かせない。けれど、最後に残った唇を使って必死にわめく。
「だって……一度成立した番を解除したら、オメガにはヒートが戻ってくるでしょう! それなのに、オメガはもう二度と他のアルファと番になることはできない! 一生番を得られないまま、一人でヒートに苦しむことになる!」
社長はまっすぐに頷いた。
「それで構わない」
ひどく澄んだ面持ちだった。
「婚約を破棄する条件は『月読柾が運命の番を見つけること』だ。一生番でいる必要はない」
声には少しの迷いもない。全ての覚悟を決めているようだった。
「噛むのは私なんですけど」
しょうもないツッコミを入れている場合じゃない。
私は必死に足をバタつかせ、何とか拘束から逃れようとした。
「こら、暴れるな」社長が子供を宥めるように言って、自分の膝で私の足を押さえる。結果として、より強く捕まっただけだった。
「一生! 一生なんですよ!」
私がアルファだと判明した時、国から専門の指導員が派遣されてきて、みっちり講習を受けさせられた。
特に番制度については詳しく説明された。オメガの――他人の人生を、致命的に破壊する危険があるからだ。
手も足も動かせない。けれど、最後に残った唇を使って必死にわめく。
「だって……一度成立した番を解除したら、オメガにはヒートが戻ってくるでしょう! それなのに、オメガはもう二度と他のアルファと番になることはできない! 一生番を得られないまま、一人でヒートに苦しむことになる!」
社長はまっすぐに頷いた。
「それで構わない」
ひどく澄んだ面持ちだった。
「婚約を破棄する条件は『月読柾が運命の番を見つけること』だ。一生番でいる必要はない」
声には少しの迷いもない。全ての覚悟を決めているようだった。