冷酷御曹司の〈運命の番〉はお断りです
経営陣のリスクを会社が負担することによって、いわゆる「攻めの経営」の一助になると考えられている。
今までに何度も部内で検討を重ね、顧問弁護士にも馬鹿にならない費用を払って相談している。
明日の取締役会で失敗は許されない。何としても一発で承認を得たい。
だからこそ一秒でも多くの時間を準備に充てたくて、家に仕事道具を持ち帰って最終確認していたのだ。在宅ワーク万歳。
「議題くらい頭に入っている。雨宮に任せるのは信頼されている証拠だな」
「そうでしょうか……」
私は歯切れ悪く応える。どれだけ準備を重ねても、初めての報告に不安は拭えない。
だが、社長は一通り資料に目を通し、何気なく言った。
「雨宮なら大丈夫だろう」
「な、何を見てそう思うんですか」
「雨宮茉優を」
訝しく思って社長を仰ぐ。
社長と関わりができたのは運命の番と判明してからだ。その短い期間で一体何を知ったというのだろう。
社長は私の疑心を含んだ眼差しをまっすぐ受け止め、
「もう四年近く一緒に仕事をしているだろ。俺が社長に就任したときに、雨宮はちょうど新卒で法務に配属されたんだから。ずっと目に入っていた。ひたむきで、物怖じしなくて、どんな仕事にも真面目に向き合って。無視できないくらいには存在感があった」
「そ、うだったんですね」
「そのうちに俺の近くに引き抜こうと思っていた。法務部長から泣いて止められたから諦めたが」
「裏でそんなことが⁉︎ ええと、でも、ありがとうございます……」
そんな風に見られていたとは思わなくて、胸の奥がこそばゆい。
今までに何度も部内で検討を重ね、顧問弁護士にも馬鹿にならない費用を払って相談している。
明日の取締役会で失敗は許されない。何としても一発で承認を得たい。
だからこそ一秒でも多くの時間を準備に充てたくて、家に仕事道具を持ち帰って最終確認していたのだ。在宅ワーク万歳。
「議題くらい頭に入っている。雨宮に任せるのは信頼されている証拠だな」
「そうでしょうか……」
私は歯切れ悪く応える。どれだけ準備を重ねても、初めての報告に不安は拭えない。
だが、社長は一通り資料に目を通し、何気なく言った。
「雨宮なら大丈夫だろう」
「な、何を見てそう思うんですか」
「雨宮茉優を」
訝しく思って社長を仰ぐ。
社長と関わりができたのは運命の番と判明してからだ。その短い期間で一体何を知ったというのだろう。
社長は私の疑心を含んだ眼差しをまっすぐ受け止め、
「もう四年近く一緒に仕事をしているだろ。俺が社長に就任したときに、雨宮はちょうど新卒で法務に配属されたんだから。ずっと目に入っていた。ひたむきで、物怖じしなくて、どんな仕事にも真面目に向き合って。無視できないくらいには存在感があった」
「そ、うだったんですね」
「そのうちに俺の近くに引き抜こうと思っていた。法務部長から泣いて止められたから諦めたが」
「裏でそんなことが⁉︎ ええと、でも、ありがとうございます……」
そんな風に見られていたとは思わなくて、胸の奥がこそばゆい。