冷酷御曹司の〈運命の番〉はお断りです

ご褒美

「――以上の通り、D&O保険と会社補償契約を当社にも導入したく御検討をお願いいたします。ご質問等はございますか?」

 取締役会室にて。

 私は無事に説明を終え、取締役たちの視線を一身に浴びていた。

 もちろんその中には社長も含まれている。
 彼はいつも通りの冷然とした表情で、私のプレゼンを聞いていた。

「一つ聞きたいんですけど」

 手を上げたのは、取締役の一人だ。
 背中にひやっとしたものが走るが、動揺はしまってにこやかに質問を促す。

「会社が負担するのは、五十億までというお話でしたけど。一ヶ月くらい前にどこかの自動車メーカーの取締役が七百億くらいの賠償責任を負ってたと思うんですけど、そういう場合には補償されないんですか?」

 社長の眉がぴくりと反応する。視線がさっと私に向けられた。心配、というよりは、お手並み拝見という目つきだった。

 オーケー、やってやろうじゃないか。

 西田先輩と法務部長が私をフォローしようと同時に動く。
 けれどそれを目線で制して、私は微笑んだ。
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