冷酷御曹司の〈運命の番〉はお断りです
 そう言う間にも、おばさんの手はテキパキと花束を作っている。菊にカーネーション、姉が好きだった白い百合。色合いを変えて、二つ分。

「茉優ちゃんはねえ、早くにご両親を亡くして、お姉さんと二人きりで生きていたところで、今度はお姉さんも亡くなってしまって。それからずっと住んでいたこの町を出て、良い大学に行って頑張ってたんだから。大事にしてあげてね」

 おばさんの口調には、祈るような切実さがあった。肩にかかる柾さんの手に力がこもる。わずかに彼の方へ体を引き寄せられて、私はよろめいた。

「……ええ、お約束します」

 その響きがやけに重みをもって聞こえた気がして、とっさに柾さんを差し仰ぐ。
 けれど身長差があって、私には彼の表情は見えなかった。

 おばさんはニコニコ顔で、私に二つの花束を渡してくる。

「茉優ちゃん、良かったわねえ。幸せになってね」
「はは、ありがとうございます……」

 花束を受け取りながら、私は笑顔を引き攣らせた。
< 38 / 56 >

この作品をシェア

pagetop