【短】水溜まりに映る花火は、綺麗だった
プロローグ
「雨、止まないね。花火大会、中止にならないといいな……」
ソファーから身を乗り出して、しとしとと雨が降り続く様子をガラス越しに眺める。
もっとよく見ようと体重を前にかければ、後ろから腕を回された。
傾いた体は同居人の肩にぶつかって、頭を預けるように止まる。
私は上目遣いに彼を見上げた。
「去年と同じだね」
「……あぁ」
伏し目気味に視線を合わせながら、口角は少しも上がらない。
そんなところも好き。
表面上は無愛想でも、彼が優しいことは身をもって知っているから。
「雨が止んだら、見に行くか?」
雨が止むことを信じて疑っていないような口振り。
私は黒い空に咲く大輪の花を想像して、頬が緩むのを自覚した。
「うんっ」
< 1 / 35 >