【短】水溜まりに映る花火は、綺麗だった
だから、全てを受け入れなければいけない。

耐えなければいけない。

悪いのは、私なのだから。


……それでも、時々逃げたいと思う心が、私を夜の徘徊に走らせる。

そこにも救いはないのだけど。




****




「ぐがー……ぐがー……」


「いた、た……」




リビングで倒れるように眠った父のいびきを聞きながら、頭を押さえる。

手のひらがぬるっとして目で確認してみると、予想通りそこは赤い液体に塗れていた。


今夜は運が悪かった。

夕飯を作るところまではいつも通りで済んでいたものの、料理を運んだ時に父が暴れ出して、焼酎の瓶で殴られてしまったから。

止血に使う服も、それを洗う洗剤も、水も、タダじゃないのに。
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