【短】水溜まりに映る花火は、綺麗だった
ガーゼと包帯は……あぁ、ちょうど今日洗濯したばかりだった。

部屋に仕舞ったから、取ってこないと。



今着ている服の袖で頭の傷を押さえながら、ふらふらと立ち上がって部屋に戻る。

着替えの服を用意してから、Tシャツを脱いで丸ごと止血に使うと、どっと疲れが襲ってきた。

床にしゃがみ込んだまま、虚ろな目で窓を見上げれば、ザーザーと雨が降っていることに気付く。


このまま外に出て、雨に紛れるように消えてしまいたい。

誰もいない、遠く、遠くへと逃げて。




「……」




止血が終わるまで、私は雨音に耳を傾けて、窓の外で線を引く沢山の雫を眺め続けた。

何分が経ったか、疲れた腕を下ろすと、くしゃくしゃにしたTシャツにたっぷりと血が染み込んでいる。
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