【短】水溜まりに映る花火は、綺麗だった
ふぅ、と溜息を吐いて、私は替えの長袖Tシャツを着た。

救急セットからよれたガーゼと包帯を取り出して、片手でガーゼを固定しながら包帯を巻いていく。

窓に反射した私の顔は、陰鬱として、疲れ切っているようで、笑えないほど惨めだった。


頭の包帯が、まるで病人みたいだ。



ずん、と重い体を引き摺って再びリビングに来た私は、父が暴れた後を片付けてから、電気を消して、そっと玄関の扉を開いた。

雨はまだ降り続いている。

そのまま外に出てしまいたい気分だったけど、傘を使えばこの服を明日も着ていられる、と理性が告げて、ビニール傘を手に取った。


家の前に出来た水溜まりを跨いで、私は暗い夜道を歩き出す。

向かう先は、人の少ない線路沿いだ。

金網越しの線路、強風を生み出して走り去る電車、その全てが落ち着く。
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