【短】水溜まりに映る花火は、綺麗だった

恵まれた男の日常②

Side:西蓮寺(さいれんじ)氷柳(ひりゅう)




「花火大会?」


「そう、夏の目玉イベント! 浮かれた空気でカモれ……楽しめる! 氷柳(ひりゅう)も行くだろ~?」


「……そうだな」




そんな調子だから人に恨まれるんだ、といちいち口にするのも疲れる。




「うわ、何その軽蔑した目! 親友に向ける目じゃないぞ」


「そうか」


「そうか、って……冷たいなぁ。俺は繊細なハートしてるんだから、もっと優しくしてくれないと」




今日の口八丁を聞き流して、スマホで数日後の予定を確認する。

例年通り、両親は7月も8月も、仕事と社交漬けの日々を送るようだ。

今年家を出たばかりとは言え、顔を見せろと呼び出されることは無いと考えていい。


家を出ても出なくても、顔を合わせる頻度は変わらないが。




「そういえばこの前の捨て猫はどうなったんだ~?」


「……標準体重に近付いた」


「ふ~ん、じゃあ飼うことにしたのか。クールな顔して動物好きとか、モテる要素しかないなー」
< 23 / 35 >

この作品をシェア

pagetop