【短】水溜まりに映る花火は、綺麗だった
お酒の匂いを漂わせながら、ふらついた動作で手に持ったビニール袋を振り回す。
避けたら逆上するから、視線を落として全部受け止めた。
缶でも入っているのか、一撃一撃が重い。
たまにいる。
私と誰かを重ねて、勢いよく責め立てる人が。
そういう人は、鬱憤を晴らすまで過激に襲ってくるから、痣や擦り傷が増えることが多い。
父から逃げてきたのに、その先でも同じように絡まれるなんて。
服を濡らさないようにと傘を差して来たけど、それも意味が無くなりそうだ。
「お前が悪いんだろぉ! あいつが言うことを聞かないのも、お前がちゃんと面倒見てないからだろうが~!」
「すみません……」
「俺ぁ毎日仕事頑張ってんだよぉ! 家の中のことはお前の責任だろうがぁ!」
服を掴まれて、がくがくと頭を前後に揺さぶられる。
出来たばかりの傷に響いたのか、頭がくらくらしてきた。
そんな状態で、肩をどんと押されたら、濡れた地面に尻もちをついてしまうのも、仕方ないことだろう。