【短】水溜まりに映る花火は、綺麗だった
「病院に連れて行く」
「ぇ……」
上滑りして、すぐに理解できなかった言葉を嚙み砕いているうちに、西蓮寺さんは私を抱き上げた。
浮いた体に、一拍遅れて意識が追い付いて、全身が硬直する。
このまま投げられたら、きっと痛いな。
「落とさないから、大丈夫だ」
「……」
恐る恐る上げた視線は、ドォンと音がした空へ吸い込まれた。
西蓮寺さんも花火へと顔を向けて、口を開く。
「綺麗だな……明日も、打ち上げるらしい。元気になったら、よく見える場所を教えてやる」
不慣れな私には、その言葉の意味がすぐに分からなかった。
けれど、病院に着くまで、ううん、病院に着いてからも優しくしてくれた西蓮寺さんの姿を見て、なんとなく理解することができた。
それは、慰めの意味を持っていたのだと。
「先生、この子を見てくれ」
「おや、坊ちゃん――」