【短】水溜まりに映る花火は、綺麗だった
「あっはは! それいいね~、ヒメ!」


「ねぇ、誰かカッター貸してやって?」




姫田さんは遠巻きにこちらを見ていた野次馬に、にこりと笑いかけた。

彼女が右と言えば右、左と言えば左に行く。

それがこの学校のルール。


近いうちに、誰かのカッターが私の元へ届くだろう。


私は唇を噛みながら体を起こし、捲れていたスカートを直した。

今の感情は安堵だけ。

生徒指導なりの先生には怒られるだろうけど、この学校の教師は生徒に手をあげない。


カッターを振り回したって、私は被害を受けないから、大丈夫だ。




****


雨が降れば水溜まりができる。

そんな当たり前の摂理のようにカッターが届いた後、私は1人、職員室の前に立った。

正確には、廊下の端の階段前に、何人か見物客がいるのだけど。
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