【短】水溜まりに映る花火は、綺麗だった


カラカラ……


「……失礼します」




私の小さな声は職員室の中まで届かなかったみたいだ。

いいや、あるいは聞こえていて無視しているのかもしれない。

それくらいは日常茶飯事だから。


私を見ることもなく、職員室内を歩き回り、並んだデスクに向かって仕事に打ち込む先生方を視界に収めて、カッターの刃を出す。

カチカチカチ、と音を出しても私に視線が向くことはなくて、仕方なく息を吸い込んだ。




「わぁぁぁぁぁぁあ!」




肺いっぱいに詰めた空気をそんな声に変換して、職員室に入りながら右手のカッターを大きく振り回す。




「な、なんだ!?」


「田中さん!? 何をしているの!」




私から人が離れる。

混乱した怒声があちこちであがる。

それでもまだ足りない。
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