妖しく微笑むヴァンパイア
「それじゃ、また明日」
校門前でそう告げた由良が、璃斗に背を向けて反対方向に歩く。
既に真っ暗になった夜道の中、
街灯だけを頼りに、徐々に見えなくなる由良の後ろ姿を見つめて。
意を決した璃斗が突然、駆け出した。
「待って!」
「っ……え?」
「やっぱり送る、危ないから」
帰り道が逆方向にもかかわらず、由良を家まで送ることを宣言する。
その瞳からは璃斗の強い意志が感じられて、非常に断りにくい状況。
本来の優しい気持ちから来ていることはわかっていたけれど、
他人と一定の距離を保つ由良には大きな出来事で。
家まで送ってもらうなんて、些細なことなのかもしれない。
だけど自分のことが徐々に知られていくのは、
いつかヴァンパイアという正体までも知られてしまいそうで怖かった。
「本当大丈夫、璃斗くんが帰るの遅くなっちゃ――」
「そんなことは全然問題じゃない」
そう言って真剣な顔が街灯に照らされて浮かび上がる。
さすが、校内でモテる男の子だけあって。
一瞬絵画のような美しさを感じてしまい、由良が息を呑んだ。