妖しく微笑むヴァンパイア
「俺たちにも楽しむ権利はあるんだし、由良ちゃんもお腹空いてたら食べたくなるよ?」
「そ、それでも生徒会長が食べ歩きなんてっ……」
「本当はもう気になる出店あるんじゃないのー?」
「う……」
まるで思考を見透かしてくるように、ニコニコと作った笑顔を浮かべる璃斗。
それに対して由良は、言葉を詰まらせてほんのりと顔を赤らめた。
何故なら璃斗の言う通り、
出店の一覧表に気になる食べ物を既に見つけていたから――。
(どうしてわかっちゃうの……私、顔に出てた?)
隠し事は得意なはずの由良も、
璃斗の前ではその鎧の効果が薄れていることを感じて焦りはじめる。
こんな調子では、いつかヴァンパイアだという秘密も知られてしまわないか。
そう考えると先ほどまで気楽にいられた心の扉が、
重い音を立てて閉まりそうになる。
そんな時だった。
「由良?」
「⁉︎ え、お、お母さん……⁉︎」
由良の自宅前で、小柄でゆるふわの髪を束ねる母とバッタリ遭遇した。
その隣には、缶ビールの入ったコンビニ袋を片手に呆然と立ち尽くす――。
「と、お父さん……」
大事な大事な一人娘が、見知らぬ男子校生と共に帰宅してきた事実にショックを受ける、
長身で少々強面の父が立っていた。