妖しく微笑むヴァンパイア
「どっちでも良いじゃない、由良も年頃の女の子なんだから」
「璃斗くんはそういうんじゃ……!」
「でも安心したわ。由良がちゃんと誰かと仲良くしていて」
そう言って由良の肩を優しく叩いた母は、こう見えて生まれた時からヴァンパイア。
だから、同じ運命を背負う娘が友達を作らず、
他人を遠ざけていることには気づいていたし、理解もしていた。
ただ、ずっと独りでいるつもりなのかと心配していただけに、
璃斗と共に帰宅してきた姿は、
同じ運命を背負わせてしまった母として喜ばしいこと。
それは父も同じ気持ちだったが、
由良の恋愛事情への心構えや準備を怠っていたため、
璃斗が帰った今もしっかり戸惑っている。
「さっきの男子は」
「え?」
「由良がヴァンパイアだって知っているのか?」
「知るわけないでしょ」
「そ、そうか」
少しホッとしたような表情を見せた父は、こう見えて生まれた時は普通の人間だった。
それがどういうわけか、今はヴァンパイアとして母と人生を共にしている。