妖しく微笑むヴァンパイア



「あっ」



 生徒会室がある三階の、非常階段へ続くガラス扉。
 そこに空を眺める由良と思しき後ろ姿が見えて、璃斗はゆっくりと扉を開いた。



「由良ちゃん?」
「あ、璃斗くん。どうしたの?」



 呼びかけられて振り向いた由良の様子は、普段と変わらない。
 少しだけ安堵した璃斗は、微笑みながら自然と隣に並んだ。



「……たまたま見かけたから。空に何かあるの?」
「ううん、眺めていただけ」



 何か考え事でもしていたのかな?
 そう思った璃斗だが、普段とは違う行動をしていた由良への違和感を完全には拭えず。

 何か話題はないかと頭の中で探した結果、
 先週対面した由良の両親について話しかけた。



「由良ちゃんのご両親、仲良しなんだね」
「え?」
「この前会った時一緒に出かけてたから、何となくそう思って」



 璃斗の目には、由良の両親がそんなふうに映った。

 由良も先週までは、うちの両親は仲が良い方だと思っていたけれど。
 それを少しだけ、疑うようになってしまった。



(あんな話聞いちゃったら……)



 ふと表情に影を落とした由良に、璃斗も何かを察して不安な表情を浮かべた。



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