妖しく微笑むヴァンパイア



 * * *


 無事に出店でチーズハットグを二本買えた二人は、休憩がてら中庭でそれを食べることにする。
 学園祭で盛り上がる声や音楽が、少しだけ遠くに感じられた。



「ごめんね、買ってきてもらっちゃって」
「由良ちゃん自ら買ってたら絶対噂が立っちゃうし」



 “高嶺の花で生徒会長の城之木さんが、チーズハットグを買っていた”

 そんなふうに注目を浴びそうな由良のため、代わりに購入してきてくれた璃斗。

 そうして中庭のベンチに並んで腰掛けた二人は「いただきます」と呟いて頬張った。
 そして口を離すと中のチーズがびょーんと伸び、互いに目が合う。



「っ……はは、由良ちゃんのチーズすごい伸びてたね!」
「り、璃斗くんだって伸びてたよ」
「どう? 初めてのチーズハットグは」
「すごく美味しい……」



 感動して瞳をキラキラと輝かせながら感想を述べた由良に、璃斗も満足そうに微笑んだ。

 由良の“初めて”に立ち会えたことが何より嬉しかったし、
 こうして二人で学園祭を回れることにも喜びを感じていた。



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