妖しく微笑むヴァンパイア
だけど、そんな想いを抱くサエを璃斗が連れ出して、中庭を去っていった。
その光景を見せられて、由良の中では初めての感情が湧き出てくる。
(……っ、嫉妬だ)
身勝手な感情であることはわかっているのに、
璃斗の優しさは自分だけに向いて欲しいと願ってしまった。
初めて他人に、異性に欲が出た。
それを自覚して、由良は両手で顔を覆う。
自分がヴァンパイアの末裔であることも、他人と関わらない理由も忘れて。
不明瞭だった璃斗への想いが今ようやく、由良の中ではっきりとしたものに変わる。
(……璃斗くんを、好きに……)
だけど、この感情は表に出せないことも充分理解していた。
何故なら、自分がヴァンパイアの末裔で
普通の人間の璃斗を困らせたり、傷つけたりはしたくない。
何より秘密を抱えたまま、この先ずっと一緒にはいられないから。
「……はあ」
大きく深呼吸した由良は、覆っていた両手をゆっくり離す。