妖しく微笑むヴァンパイア
実際、由良の父はヴァンパイアの母に助けられたあと、
いつの間にか鋭い牙のような歯が生えてきて。
日に日に自分が以前の自分ではない感覚に襲われていき、
そうやってヴァンパイア化していったと語っていた。
命を助けてもらったとはいえ、人生を狂わされたはずの父は、
同族である母と結婚するしかなくなったのだろう。
そうして、ヴァンパイアの血を受け継ぐ由良が生まれた。
父はそれで良かったのだろうか。
同じ思いを、璃斗もしてしまわないだろうか。
今後の不安と後悔で息をしていても苦しい由良。
その時、生徒会室のドアがノックされて、姿を現したのは――。
「あ、有川先輩⁉︎」
「っ!」
会計くんの言葉に驚いた由良が顔を上げると、
地震発生前に見た元気そうな璃斗が、私服姿で笑顔を浮かべて立っていた。
顔色も良好、痩せ細った感じも見受けられない。
以前と何ら変わらない璃斗に、一年生の二人が駆け寄る。
「みんな久しぶり〜」
「有川先輩、今日退院だったんですか?」
「うん、ちょっと学校に顔出しに寄った」
さっき退院した人とは思えないくらいに、ニコニコと明るく話す璃斗。
いきなりの登場に言葉を失って立ちつくす由良は、
三人が会話する光景を呆然と見つめていた。