妖しく微笑むヴァンパイア
その視線に気づいた璃斗は、一年生の二人の間をすり抜け由良のもとへと向かう。
「心配かけてごめんね、由良ちゃん」
「あ……いや、私こそ、何もしてあげられなくて……」
入院中の病院も知ろうとせず、
生死を彷徨っていたらと思うとお見舞いも怖くて行けなかった。
何もしてあげられなかったのに、
どうして彼は感謝の眼差しを向けてくるのだろう。
後ろめたい気持ちから由良が視線を落とす。
すると突然、璃斗が自身の首筋にゆっくりと触れた。
「何言ってんの、助けてくれたじゃん」
「……え」
「ちゃんと覚えてるよ。ここに……」
“噛みついてくれたよね”
「ッ⁉︎」
声には出さず唇だけを動かして微笑んだ璃斗。
その口元には、以前には確認できなかった牙がチラリと見えた。
見え隠れするヴァンパイアの特徴に、由良の心臓がギュっと縮まる。
意識がないと思っていたのに、
止血のため由良が噛みついたあの行為を、璃斗は覚えていた。
能力がバレた?自分が普通の人間ではなくなったことに気づいた?
そう思った由良の顔色が、徐々に青白くなっていく。