妖しく微笑むヴァンパイア



「あの……璃斗くん」
「ん?」
「お、お話が……あります」



 由良が噛みついたことで、璃斗の命が救われた。
 それは喜ばしいことだけど、その代償として本人に説明しておかなければならないことがある。



「俺も、由良ちゃんに話があるんだ」
「……え?」
「大事な話が」



 そのセリフに、再び由良の心臓がドキリと跳ねた。



(もしかして璃斗くんはもう、自覚している……?)



 不本意な形で、自分がヴァンパイアになってしまったこと。
 不思議な能力が目覚め、ヴァンパイアとしての血を受け継ぐことになってしまったこと。


 同じ運命を背負わせてしまった後ろめたさを抱えて、由良が神妙な面持ちで璃斗を見つめる。

 それに気づいた書記さんと会計くんは、互いに目配せしたのち。
 「先に帰ります」と気を利かせて生徒会室を出て行った。



 バタン。


 二人きりとなった室内で、少しの沈黙が走る。

 すると璃斗が決定的な言葉を口にした。



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