妖しく微笑むヴァンパイア



「どうして俺をヴァンパイアにしたの?」
「っ⁉︎」



 普段の璃斗とは違う、少し冷たい瞳をしていたことで、
 直感的に由良はこれから「責められる」と思った。 

 でもそんなことは噛みついた瞬間に覚悟していたから、
 どんな怒りの言葉も悲しい感情も甘んじて受けるつもり。



「ごめんなさい、止血するには噛み付くしかなくて……」
「止血?」
「でもそのせいで、璃斗くんはヴァンパイアに」
「そうだったんだ……」
「私もそんなことしたくなかった、だけど!」



 あの時の感情が蘇って、目頭が熱くなる。

 “そばにいられるだけで……”

 最後にそう呟いた璃斗の真意が知りたくて、話したいことがまだまだたくさんあって。

 何より、璃斗を失いそうになって初めてわかった。

 由良の抱いている好意は一生伝えるつもりのないものだったのに、
 伝えないままでいることが、どんなに辛く耐え難い地獄を生きるに等しいかを。



「……生きていて欲しかった、璃斗くんに」
「由良ちゃん」
「っ……初めて、好きになった男の子だから……」



 震える声でそう告げた途端、だらだらと溢れ出てきた涙を雑に拭う由良。



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