妖しく微笑むヴァンパイア
エピローグ
璃斗をヴァンパイアにしてしまうことは不本意だったけれど、
命を助けるためには仕方なかった。
由良はそんな思いで止血のために璃斗へ噛みつき、
彼がヴァンパイアになってから入院生活も含めて二週間が経った頃。
通常の授業が終わって放課後を迎え、生徒会室にやってくると――。
「由良ちゃん、ぎゅって抱きしめてもいい?」
「だ! だめに決まってるでしょ!」
一年生がまだ到着していないことをいい事に、
ヴァンパイアとなった璃斗は隣に座って書類整理をする由良へ
執拗に絡んでくるようになった。
「え〜キスした仲なのに?」
「っあれは璃斗くんが無理矢理……!」
「嫌だったら殴るなり蹴るなりしても良かったのに」
「な、退院明けの人にそんなことできるわけ……」
カッと顔を赤く染めた由良が睨むと、
こんな会話すらも楽しんでいるのか、璃斗が満面の笑みを浮かべる。
「じゃあ正式に彼女になってくれる?」
「っ……!」
上目遣いで仔犬のように願いを口にするから、
普段は狼狽えることのない由良が頬を赤く染めて視線を逸らした。