妖しく微笑むヴァンパイア
「二人ともどうしたの?」
「あ、いや……私、書記になれて嬉しいです」
「ん?」
「だって、推し同士が仲良く会話している光景をこんな近くで見られるなんて」
「……はい?」
書記の女子生徒がそう呟くと、おもむろにハンカチを取り出して目元を押さえる。
それを見た会計の男子生徒は、書記さんの肩をトントンと叩いて励ます仕草をした。
どういうこと?と話の内容が見えなくて首を傾げる由良に、
会計くんが丁寧に説明をはじめる。
「多分お二人は知らないと思いますけど、城之木先輩と有川先輩って一年生の間で結構有名で」
「な、なぜ?」
思わず声が漏れてしまった由良は、初耳の情報に相当驚いていて。
一方の璃斗は心当たりがあるのか、少し気まずそうに会計くんの話を聞く。
「容姿端麗でミステリアスな城之木先輩のファンは多いんですよ」
「待って私、大して特別なことは何も……」
していないのに、むしろ他人と関わろうとしてこなかった人間、
いやヴァンパイアなのに。
いつの間にかそんなふうに思われていたなんて、と頭を抱え始めた由良。