あのメガネアイドルは…。
そういうの
女子「いやー歌ったねー」
カラオケの駐輪場。
自転車のロックを解く音が暗い空に響く。
真白「じゃあ、私電車だから」
自転車の子ばかりで、電車は真白は1人。
駅はみんなと逆方向であるため、手を振って歩き出そうとしたとき。
中村「あのさ、真白。もう、暗いし後ろ乗れば?」
自転車に跨る中村が視線を外して、そう言った。
短髪で目鼻立ちはあっさりした中村。
よく笑うわけでもよく話すわけでもない。
どちらかと言えばカラオケの雰囲気は苦手そうに思う。
真白と中村は特別仲のいいわけでもないが、中村が自分に恋をしているということには気が付いている真白。
真白が参加する放課後の遊びには塾をサボってまで参加する中村だから。
周りの子達はその言葉に笑みを浮かべながら顔を見合わせる。
真白「いや、大丈夫。そういうの嫌いだから。」
そういうの。
真白は笑顔で手を振ってみんなに背中を向け、街頭の少ない道を歩き出した。
「あんた、完全に脈なし」
「真白ちゃんに嫌われたな」
中村「まじかよ」
後ろからそんな声が聞こえてきて真白はため息をついた。
真白(気づいてなかったんだ。誰も。)