密事 夫と秘書と、私
瀬戸さんが和貴さんを呼びに来るまでの1時間、散々弄ばれた。
せっかく綺麗にセットしてもらった髪は崩れ、ドレスも汚してしまった。

1人部屋に残された私は、放心状態でソファーに横たわり、どうしようかと考えるだけで、動ごくことも出来ない。

「はぁ……もう……」

結局、不完全燃焼のまま時間切れだった。でも多分それもあの人の計算のうち。
体の熱が引かない。物足りない。消えない欲は腹の奥底にぐつぐつと沸騰している。

そんな静かな室内に、コンコンと乾いた音が響く。

「失礼します」

ドアをノックするのと同時に、ズカズカ部屋に入ってきたのは、言うまでもなく夫の秘書だった。

「勝手に入ってこないでよ」

私は慌てて乱れたドレスの裾を直し、瀬戸さんを睨め付けた。
しかし彼はそんなこと特別気にする様子もなく、いつものように淡々と話を進めていく。

「着替えの用意、ございますよ。シャワーは入られますか?」

その手にはバスタオル、もう片方には黒のロングドレス。

どこまで用意周到なんだろう、この秘書は。
何もかも想定内だったのか、全て仕組まれていたのか……。

「ねぇ、こうなるって分かってたの? 何のつもりか知らないけど、困るんだけど!」

「美咲さんのご要望にお応えしたまでです」

「え?」
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