密事 夫と秘書と、私
部屋に戻ってシャワーを浴び、脱衣所でパジャマに着替えていると、玄関の鍵が開く音が聞こえた。
夫の秘書は合鍵を使い、まるで自宅のようにこの部屋に上がり込んでくる。いつも。
「そんな我が物顔で勝手に入ってこないでよ」
私は脱衣所のドアを空けて、侵入者に文句を投げる。
「社長からお許し頂いてます」
「私のプライバシーとかそういうのは無視?」
「それも社長からお許し頂いてます」
「なにそれ……せめてチャイムくらい鳴らしてよね!」
バタン!とわざと大きな音をたててドアを閉めた。返答はない。
社長の求めることを忠実にこなす。それが秘書の仕事だとはいえ……彼のその忠誠心は度がすぎていて怖い。
主人以外を『人』としてみていないような気さえする。
私も1人の人間なんですけど……。
ボソッと呟きながら、キッチンから物音が聞こえてくるのを無視して、無駄に広い洗面所でスキンケアをし、髪を適当に乾かした。
瀬戸さんがこうやって頻繁に私に会いに来てくれるのは、それが仕事だからで、お互い特別な感情はない……というのは分かっているけど、あの顔を見ると、やっぱりちょっと安心する。
ついつい悪態をついてしまうけど、夫以外でコミニュケーションをはかれる唯一の人だから、なんだかんだ彼のことは嫌いになれない。
いつ寝ているのだろう。
息つく暇はあるのだろうか。
なんて、もうとっくに日付は変わっているのにまだまだ仕事モードな秘書のことを、少しばかり心配する。
夫の秘書は合鍵を使い、まるで自宅のようにこの部屋に上がり込んでくる。いつも。
「そんな我が物顔で勝手に入ってこないでよ」
私は脱衣所のドアを空けて、侵入者に文句を投げる。
「社長からお許し頂いてます」
「私のプライバシーとかそういうのは無視?」
「それも社長からお許し頂いてます」
「なにそれ……せめてチャイムくらい鳴らしてよね!」
バタン!とわざと大きな音をたててドアを閉めた。返答はない。
社長の求めることを忠実にこなす。それが秘書の仕事だとはいえ……彼のその忠誠心は度がすぎていて怖い。
主人以外を『人』としてみていないような気さえする。
私も1人の人間なんですけど……。
ボソッと呟きながら、キッチンから物音が聞こえてくるのを無視して、無駄に広い洗面所でスキンケアをし、髪を適当に乾かした。
瀬戸さんがこうやって頻繁に私に会いに来てくれるのは、それが仕事だからで、お互い特別な感情はない……というのは分かっているけど、あの顔を見ると、やっぱりちょっと安心する。
ついつい悪態をついてしまうけど、夫以外でコミニュケーションをはかれる唯一の人だから、なんだかんだ彼のことは嫌いになれない。
いつ寝ているのだろう。
息つく暇はあるのだろうか。
なんて、もうとっくに日付は変わっているのにまだまだ仕事モードな秘書のことを、少しばかり心配する。