きみと見つける 明日の色は。
この柵を越えて、身体がバランスを崩すようなことがあれば。
僕は、死ぬのだろうか。
この柵を越えて、目を瞑り足を一歩踏み出すだけで。
生きていて何にもないつまらない日々から、脱出できるのだろうか。
頑丈そうな柵に手を置いて、下を覗く。
——怖い。
建物5階分の高さのはずなのに、100mくらいあるように感じる。
ずっとずっと深いところまで落ちてしまうような気がする。
その反面、“怖い“というごくごく普通の感情がこんな僕にも湧いてきたことに、安心感を覚える。
まだ生きているんだと。
それでも僕は、僕は。
生きていてもしょうがないから……。
「……よし」
自分に喝を入れるために発した誰にも聞こえないような小さな声は、夕暮れの空に溶けていった。
柵に置いていただけだった手に力を込めて、柵を越えるために身体を持ち上げる。片足を柵の外に出そうとした、そのとき。
「風見くん」
凛と響く鈴のような女性の声がした。
しかし僕はその声を無視して、右足を外に出す。
「ねぇ、風見くん。お腹、空いてない?」
ぷつんと糸が切れた音がした。今まさに屋上から飛び降りようとしていた僕の心を、その華やかな声は思いもよらない言葉で引き止めた。
それが僕が、西川葉菜乃と初めて会話をした日だった。
そのときはまだ、目の前で微笑みを浮かべる彼女との交流が続くなんて、ましてや僕の心を救ってくれるなんて思ってもいなかったんだ。
僕は、死ぬのだろうか。
この柵を越えて、目を瞑り足を一歩踏み出すだけで。
生きていて何にもないつまらない日々から、脱出できるのだろうか。
頑丈そうな柵に手を置いて、下を覗く。
——怖い。
建物5階分の高さのはずなのに、100mくらいあるように感じる。
ずっとずっと深いところまで落ちてしまうような気がする。
その反面、“怖い“というごくごく普通の感情がこんな僕にも湧いてきたことに、安心感を覚える。
まだ生きているんだと。
それでも僕は、僕は。
生きていてもしょうがないから……。
「……よし」
自分に喝を入れるために発した誰にも聞こえないような小さな声は、夕暮れの空に溶けていった。
柵に置いていただけだった手に力を込めて、柵を越えるために身体を持ち上げる。片足を柵の外に出そうとした、そのとき。
「風見くん」
凛と響く鈴のような女性の声がした。
しかし僕はその声を無視して、右足を外に出す。
「ねぇ、風見くん。お腹、空いてない?」
ぷつんと糸が切れた音がした。今まさに屋上から飛び降りようとしていた僕の心を、その華やかな声は思いもよらない言葉で引き止めた。
それが僕が、西川葉菜乃と初めて会話をした日だった。
そのときはまだ、目の前で微笑みを浮かべる彼女との交流が続くなんて、ましてや僕の心を救ってくれるなんて思ってもいなかったんだ。