【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
わたしが去年のことを思い出していると、いつの間にやら椅子に腰かけていた彼から尋ねられる。
「ねぇ、ユリア。料理が二人分しかないみたいなんだけど、君のおばあさまはいないのかい?」
その問いに、わたしははたと思い出した。
「ごめんなさい、言うのを忘れていたわ。おばあさまは昔の友人に用事があるからって、昨日の朝から出掛けているの。帰ってくるのは明日の夕方になるって言ってたわ。――何かおばあさまに用事があったの?」
この言葉に、彼が一瞬狼狽える。何か大事な用事でもあったのだろうか。
「もし急ぎなら、明日おばあさまが帰ってきたらわたしから伝えておきましょうか?」
わたしはそう提案した。けれど彼は言葉を濁す。
「いや。別に、そういう訳じゃないんだ」
「どうしたの? 何かあるなら言って」
「いや、……だから」
「……?」
「……その、二人きりなんだな、って」
「――っ!」
刹那――一瞬で顔が熱くなる。
そんなわたしに釣られてか、心なしか彼の顔も赤くなったように見えた。
彼は気まずそうに視線を逸らす。
「ご、ごめん! 深い意味はないんだ。さ、食べようか! 僕もうお腹ペコペコだよ」
誤魔化すように笑って、耳まで赤くする彼。
そんな彼に、わたしは何と返したらいいかわからなくて――。
「そうだわ! わたし、スープを温めなおしてこなくちゃ!」
彼をテーブルに一人残し、慌てて台所に駆け込んだ。