【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
――人間嫌いのアメリア。
冷酷で、冷淡で……決して他人に笑顔など見せたことはない。傲慢で、高飛車で……この社交界で必要なレディの素質をまったく持ち合わせていない。
他人に気を遣うことはせず、お世辞の一つも言わず、他人のミスを決して許さず、ダンスを申し込まれても冷たくあしらい、すべての招待状には不参加の返事を送る。
そんな女を妻に迎えたいと思う男などいるはずがない。いるとしたら余程の変人であろう。
「ファルマス伯。あなたにわたくしを妻にする覚悟が本当におあり?」
そう尋ねると、彼は今度こそ表情を変えた。
頬の筋肉が固くなり、眉間に一本の皺が寄る。そこに映るのは、彼の本音――。
この時代の貴族の結婚、それは一言で言えば政略結婚である。大切なのはあくまで形であり、体裁であり、貴族は家の利益のために婚姻を結ぶ。それが恋愛を伴っていたとしても例外ではない。
そういう意味で言えば、確かにこの縁談はセシル家の利になるのだろう。我がサウスウェル家の領地では希少な鉱石が多く採掘されるのだから。
しかしそれ以上に、私を妻にするデメリットが大きすぎる。私は夫となる男にとって手に余る存在となるだろう。
彼はしばらくの間何も言わなかった。何と答えるべきか思案しているのだろう。
つまり、この男は私のことを好いているわけではないということ。――ならば好都合。これならばきっとうまくいく。