【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
――なんだか、とても安心させられる笑顔。心が自然と温かくなるような……。不思議な人ね。
そんなことを思いながら、私は手帳に自分の名を書き綴った。
彼はそれを見て、ふわりと微笑む。
「アメリアっていうんだ。とても綺麗な名前だね」
少年のような――まるで裏表のないその声音に、私はなんだか懐かしいような、見覚えのあるような……そんな不確かな何かを感じてしまう。
「僕、君のこと何て呼べばいいかな? アメリアって呼んでもいい?」
私はその問いに、特に考えるでもなく頷いた。すると彼は嬉しそうに眉根を下げる。
「僕のことはライオネルって呼んでね。なんなら、さっきみたいに腕を掴んでもらっても、肩を叩いてもらってもいいし」
私を気遣いつつも、何の差別も含まない彼の純粋な眼差し。
そのことに、私は驚かずにはいられなかった。見ず知らずの人に手を差し伸べられるその心根が、今の私には眩しいくらいに温かくて……今は、それがたまらなくありがたい。
「そうだ。お腹は空いてない? 僕も朝食まだだから、下で一緒にどう?」
――食事。そうだわ。私、昨日のお昼から何も食べてないわね。
思い出すと急にお腹が空いてきた。食欲ばかりはどうにもならない。
私は彼の申し出を、ありがたく受け入れることにした。