【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉

 *

 ライオネルの後ろについて客間に入ると、ルイスはすぐさまソファから立ち上がった。

「アメリア様、よくぞご無事で……!」

 彼はその顔を安堵させ速足で私に近づくと――どういうわけか、跪く。

「アメリア様の身を心から案じておりました。あの場でお助けできなかったこと――悔やんでも悔やみきれません。ウィリアム様より既にお叱りは受けました。(わたくし)の非力をお許しください。本当に……本当に……ご無事で何よりでございます」

 伏せた顔をそのままに、思い詰めたように肩を震わせるルイス。

 けれど私には、その言葉が果たして本心なのか、それとも演技なのか、少しもわからない。

 ――なんだか、気味が悪いわね。

 けれど、きっとこれは侯爵家の威厳と主人への忠誠心を見せつけたいということなのだろう。ならば、私もそれを利用させてもらうまでだ。

 私は顔に笑みを張り付け、ルイスの肩にそっと手のひらを置く。すると彼はようやく顔を上げた。

 私はそんな彼を見つめ、首をわずかに横に振る。
 そんな顔をしないで、あなたは何も悪くない。そう訴えるように。

 ――刹那、ルイスの眉がピクリと動く。

「アメリア様……?」

 彼は察したようだった。私の声が出ないことを。

 その事実はさすがのルイスも予想外だったのだろう。彼はその整った顔を硬直させ、そのまま一秒……二秒……三秒が過ぎる。

 その沈黙に、私は内心驚きを隠せなかった。

 この男も驚くことがあるのかと――彼のことなど何一つ知らないはずなのに、そう思った。
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