【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
それはともすれば不敬と訴えられてもおかしくない態度で――私は突っ込まざるを得ない。
『あなた、普段はそんな感じなの?』
すると彼はあっけらかんと言い放つ。
「ええ、まぁ。おかしいですか?」
――いや、十分おかしいだろう。世間的には私はウィリアムの婚約者。その私に向かってそんな態度は、普通ならばあり得ない。
そんな風に考えていると、彼はにやりと口角を上げた。
「そんな目で見ないでくださいよ。そんなに僕の印象って悪いですか?」
――僕……? それが彼の本来の一人称なのだろうか。
『あなたといいウィリアムといい、裏表が激しいのね』
「ははっ、この仕事で猫の一つも被れなくてどうするんです。貴族社会が生易しいものではないことを、あなたはよくご存じでしょう?」
そりゃあ私だってそれくらいのことは理解している。
けれどこの変わりようはあまりにも……。
――ルイスは私の視線を受け流し、再び外の景色に目を移す。
「今の僕は機嫌がいい。正直、こんなに早くあなたと二人きりになれるとは思っていませんでしたから。あなたには悪いですが、僕はあなたが川に落ちてくれて良かったとさえ思っていますよ」
「…………」
「あなたは湖で、アーサー様から僕のことを聞かされたでしょう? 僕に何か質問があるのでは?」
「…………」
「何でも聞いてください。できる限り答えますから」
その言葉にも、彼の横顔にも、少しの嘘もないように見える。
けれどだからといって、信用などできるはずがない。
――まぁどちらにせよ、今の私に選択肢などないのだけれど……。