【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
「アメリア様……答えを」
――窓から吹き込む初夏の風が、ルイスと私の間を駆け抜ける。
その爽やかな風に背中を押され、私はようやく決意した。
迷うな、と自身に言い聞かせ、震える手でペンを走らせる。
そしてそれを、ルイスの眼前に突き付けた。
『承諾するわ。けれど、万が一でもウィリアムを助けられないなんてことになったら、私はあなたを殺す。たとえそれが何の意味もないことだとしても』
「……ほう」
私の宣言に、ルイスはまるで感嘆に近い声を漏らし、その瞳を鋭く細める。――が、それも束の間、彼は満足げに微笑んだ。
「いいでしょう。万が一にもそんなことはあり得ませんが、もしものときは喜んで、あなたにこの命を捧げましょう」
射抜くようなルイスの視線。
そこには何の不安も映っていない。あるのはただ、絶対的な自信だけ。
そんな彼の表情に、私は確信する。ルイスは必ずウィリアムの命を助けるだろう。
ああ、ならば私も受け入れなければ。
ウィリアムの命を救い、ルイスと共に生きる。その、覚悟を――。
――私たちはしばらく見つめ合っていた。
短くも、とても長い沈黙。それは死ぬ間際の走馬灯のように、私たちの間を流れていく。
部屋に冴え渡る、十二時を告げる教会の鐘の音。
その音は私たちの呪われた運命を祝福するかのように……何度も、何度も、繰り返し鳴り響く。
「これで……契約は成立です」
鐘の音の余韻を残し宣言されたルイスの言葉。
その言葉に、私はひとまず安堵した。が、それも束の間――突然彼は様子を変えた。
それはどこか危うげに。――その理由を、私はすぐに知ることになる。