【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
そもそも今回の縁談を言い出したのはウィリアム本人ではなく、ウィリアムの父、ウィンチェスター侯爵ロバート・セシルである。
ロバートは非常に心の広い温厚な性格であったが、今年で二十二になる息子ウィリアムがなかなか身を固めないことに悩んでいた。良い話はいくつもあるが、ウィリアムがなかなか首を縦に振らないのである。
ロバートはウィリアムの性格をよく理解していた。
ウィリアムは昔から全ての階級の者に対して平等に接してきた。飢えた者には自ら食事を分け与え、病気の者には治療を施した。メイドを家族同然に愛し、執事の言葉を決して軽んじなかった。不正を許さず、結果には拘らず、その過程の努力を鑑みて評価した。
その精神を、全てのものに中立であろうとする姿を、ロバートは高く評価している。
しかしウィンチェスター侯爵家の当主としては、先々の後継ぎの問題は解消しておかなければならない。婚約者もいないままで当主の座を譲り渡すわけにはいかないのである。
けれど何年経ってもウィリアムは結婚どころか婚約すら済ませようとせず、ロバートはとうとう痺れを切らした。
彼はルイスに命じ、ウィリアムと年が離れすぎておらず、相手の決まっていない令嬢を一人残らず洗い出させた。――その中の一人が、アメリアだったのである。
だが彼女の社交場での評判は散々なものだ。氷の女王と揶揄されるほどに。
それなのになぜアメリアが自分の縁談の相手となったのか――その理由に思い当たり、ウィリアムは困惑げに問いかける。
「まさか……お前がアメリア嬢を推したのか?」
今までそんなこと一言も言わなかったではないか。彼はそう訴える。
「そうですよ。申し上げなかったのにも理由があります。質問は最後までお聞きになってからにしてください」
「……わかった」
ロバートは非常に心の広い温厚な性格であったが、今年で二十二になる息子ウィリアムがなかなか身を固めないことに悩んでいた。良い話はいくつもあるが、ウィリアムがなかなか首を縦に振らないのである。
ロバートはウィリアムの性格をよく理解していた。
ウィリアムは昔から全ての階級の者に対して平等に接してきた。飢えた者には自ら食事を分け与え、病気の者には治療を施した。メイドを家族同然に愛し、執事の言葉を決して軽んじなかった。不正を許さず、結果には拘らず、その過程の努力を鑑みて評価した。
その精神を、全てのものに中立であろうとする姿を、ロバートは高く評価している。
しかしウィンチェスター侯爵家の当主としては、先々の後継ぎの問題は解消しておかなければならない。婚約者もいないままで当主の座を譲り渡すわけにはいかないのである。
けれど何年経ってもウィリアムは結婚どころか婚約すら済ませようとせず、ロバートはとうとう痺れを切らした。
彼はルイスに命じ、ウィリアムと年が離れすぎておらず、相手の決まっていない令嬢を一人残らず洗い出させた。――その中の一人が、アメリアだったのである。
だが彼女の社交場での評判は散々なものだ。氷の女王と揶揄されるほどに。
それなのになぜアメリアが自分の縁談の相手となったのか――その理由に思い当たり、ウィリアムは困惑げに問いかける。
「まさか……お前がアメリア嬢を推したのか?」
今までそんなこと一言も言わなかったではないか。彼はそう訴える。
「そうですよ。申し上げなかったのにも理由があります。質問は最後までお聞きになってからにしてください」
「……わかった」