【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
「確かにそのとおりだ。――だが、お前だけだぞ。この俺にそんな口を利くのは――」
「ふふふっ」
ヴァイオレットは今度こそ、心底おかしいと言わんばかりに声を漏らした。
「まるでわたくしを愛しているようなおっしゃりようですこと」
アーサーを見下ろし、にこりと微笑む。
「でもわたくしの勘違いですわよね? この関係に愛が不要であることは、あなたが一番よく理解されているはずですもの」
「当然だ。愛などと……馬鹿馬鹿しい」
「そうですわよね。安心致しましたわ。でも、わたくしすっかり興が冷めてしまいましたの。それに今夜のアーサー様にはいつもの覇気がありませんもの。わたくし、つまらないですわ。続きはまたに致しませんこと?」
「……っ」
――まただと? ここまでしておいて? アーサーは内心そう思ったが、けれどこの雰囲気のまま最後までする気になれないのも事実である。受け入れる以外の選択肢はない。
アーサーはヴァイオレットの提案に、仕方なく無言で肯定の意を示す。
すると、そのときだった。まるでそのタイミングを見計らっていたかのように、カツ、カツ――と、何かが窓を叩く音が聞こえた。
アーサーが目をやれば、そこには見覚えのある一羽の白い梟の姿がある。
――あれは……べネスか……?
彼は途端に顔色を変え、ローブを羽織り窓を開け放つ。夜の冷気が部屋に流れ込み、それがアーサーの熱を一気に冷ましていった。
「どうした、こんな夜更けに。何かあったのか?」
ウィリアムは時々こうしてルイスの梟を使い、アーサーに手紙をよこすことがある。当然それは、緊急性の高いときに限ってであるが……。
今回もそれだろうか。そう考えたアーサーがべネスに手を伸ばすと、べネスはアーサーの手のひらに筒状の手紙を落とし、再び夜の闇へと飛び立っていく。
ヴァイオレットはその様子を、ベッドの上から不思議そうに見つめていた。
アーサーは窓を背にして手紙を開く。すると中にはこう書かれていた。
《彼女のことで直接君に確認したいことがある。日が昇った一時間後にそちらへ出向く。外で待っていてくれ ―W―》
――何だ……?
アーサーはその内容に強い違和感を覚えた。