【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
けれどまさか夢などと。悪夢のせいで、俺は一時間以上も待たされたのか……?
ウィリアムの中で、抑えていた苛立ちが再び頭をもたげる。
「まさかこの年になって悪夢とは。大の男が聞いて呆れるな」
「……そう、だな。俺もそう思っている」
――ウィリアムは今、わざとアーサーの気に障るような言い方をしたのだ。
それでもアーサーは言い返してこない。
ウィリアムはそんなアーサーの態度に、今度は猜疑心を募らせる。
彼は昨夜からずっと考えていた。昨日の夕刻、アルデバランから一人戻ったルイスの言葉が真実であるのかを。それを確認するために、こんな朝早くからアーサーを呼び出したのだ。
アーサーが見たという悪夢。それだって、何か後ろめたい――心当たりがあったからではないのか。ウィリアムはそう考えてしまう。
「アーサー、君に聞きたいことがある」
いつもより数段低いウィリアムの声に、その場の空気が張り詰める。
「……何だ」
アーサーの心はルイスへの疑念で溢れていた。
彼は自分がウィリアムに呼び出された理由――そこにルイスが関係していることだけは予想していた。けれど、内容だけはどう考えてもわからなかった。
「単刀直入に聞く。湖で、君はアメリアと二人きりになっただろう。そのとき、君は彼女と何を話した?」
アーサーを見据えるウィリアムの瞳。そこには確かに怒りの色が垣間見え、アーサーは眉をひそめた。
「なぜ、そんなことを聞く」
アーサーは問い返すが、ウィリアムはぴしゃりと退ける。
「今は俺が質問しているんだ。答えろ、アーサー。君は彼女に何を言った? 彼女を抱きしめたというのは……本当か?」
「――っ」