【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉

 再び険悪になる部屋の空気――それを破ったのは、やはりルイスだった。

「お言葉ですが――ウィリアム様、さすがに言葉が過ぎるというものです。ライオネル様は善意を以ってアメリア様をお助けくださいました。どうか紳士的なご対応を」

 だがウィリアムは聞こうとしない。

「くどい。もとはと言えば全てお前の責任だろう。お前が彼女の側を離れるからこんなことになったんだぞ」
「ですが……」
「本来ならお前の首が飛ぶところ、私が温情をかけてやっているのがわからないのか。これ以上の口答えは許さんぞ」
「……っ」

 ウィリアムの横暴すぎる物言いに、ルイスは今度こそ押し黙る――が、私はなんとなく感じていた。
 この二人のやり取りは、大なり小なり決められた流れであるのだろうと。
 ウィリアムもルイスも、何らかの理由があってこんな芝居を打っているのだ――と。

 その理由まではわからないけれど……とにかく、このやり取りに一番肝を冷やしているのは私でもルイスでもなく、ライオネルであることは確かで……。

 その証拠に、ライオネルはウィリアムに責められるルイスを見て、酷く顔を青ざめさせていた。
 彼は自分の対応が生み出してしまったこの状況に、強い罪悪感を抱いているようだった。

 ――ウィリアムは更に続ける。

「これ以上のやり取りは時間の無駄だ。小切手(これ)は執事に預けておく」

 言いながら、彼は小切手をルイスに向かって差し出した。
 ルイスはそれを渋々受け取り、執事へと手渡す。――すると、礼儀正しく目礼する執事。

 ライオネルは、執事のウィリアムに対する恭しい態度を、苦々しげに見つめていた。
 けれど異を唱えることなどできようはずもなく――。
< 174 / 194 >

この作品をシェア

pagetop