【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉

「言い訳をするつもりはない。けれど俺は、アーサーがまさか君に手を出すだなんて思ってもみなかったんだ」
「……っ⁉」
「だが勘違いしないでほしい。彼を庇うつもりはない。あいつは許されないことをした。そしてそれに気付かなかった、その可能性を考慮しなかった俺に、全ての責任がある。当然、許してもらえるとは思っていない。許してもらいたいとも……そんなこと、言う権利は俺にはない。俺にできるのは……ただ、君に誠心誠意謝ること……それだけしか……」

 ――ああ、これはいったいどういうことだろう。ウィリアムは今回のことが、全て自分のせいであると――いや、アーサーのせいだと思っているのだ。私が川に落ちたのも、声を失ったことも、事故ではなくアーサーのせいであると。

 当然、そうなるように仕向けたのはルイスだろうが……。

 私が困惑していると、今度はルイスが口を開く。

「アメリア様、私からも誠心誠意の謝罪を。その手首の傷は、昨日のアメリア様のご様子を知っておりながら側を離れた私の責任。万が一傷が残るようなことになれば、いかようの処分もお受け致します」

 そう言って、ルイスは座席に腰を下ろしたままに深く頭を下げた。

 その姿に私は悟る。つまりそういう筋書きなのだ、と。私の手の傷が無くとも、昨日私の声が出ないことがわかった時点で、ルイスの中ではこのシナリオが出来上がっていたのだ。
 アーサーを貶め、ウィリアムにそれを庇わせる形で私との仲を取り持とうと考えた。

 ああ、なんと卑劣なやり方だろう。けれどルイスの命令には絶対服従の契約がある限り、私がこの筋書きを壊すことは許されない。――それに……。

 再びウィリアムを見上げれば、私をまっすぐに見つめる彼の真剣な瞳があって……どんなシナリオだろうと、それが偽りであろうとも、構わないと思ってしまうのだ。
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