【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
「アメリア、聞いてくれ。俺はアーサーと縁を切った。彼が君の前に姿を現すことは二度とないだろう。もし万が一のときは、俺が君を守ると誓う。だから……」
言いながら、そっと私の右手を取るウィリアム。そこに巻かれた包帯に、ウィリアムの顔が悲しげに歪んだ。
「二度と、こんなことはしないでほしい」
まるで私を心から心配しているように、まるで本当に愛しているかのように、私を見つめるウィリアムの瞳。――その視線に、胸が熱くなる。
――そう、そうよ。……答えなんて最初から決まってる。
ここまで来たら引き返すことはできないのだ。私がやるべきことは、ウィリアムを愛し、愛される……ただ、それだけ。
だから私は微笑みかける。すると彼はようやく安堵の表情を見せ、はぁっと緊張が解けたように大きく息を吐いた。そして――。
「それでなんだが、王都に戻ったら君のお父上にお願い申し上げようと思っているんだ。できるだけ早く君を我が侯爵家の屋敷に迎え入れたいと。結婚前だが前例がないわけではないし、我が家に慣れてもらうためだと考えれば……。どう、だろうか?」
「――!」
予期せぬウィリアムの提案に、私はただ驚くほかない。
こんなにも早く私とウィリアムが一緒に住むだなんて、いったい何をどうしたらそんな話になるのだろう。これもルイスの筋書きなのだろうか? ああ、きっとそうに違いない。
でも、たとえそうであったとしても、私にはこの話を喜ぶ理由はあれど、断る理由などひとつもありやしない。かつてのエリオットと共に過ごす生活を私がどれだけ夢見たことか。けれどそれが今、現実になろうとしている。
「俺と一緒に過ごすのは、嫌か?」
あまりの嬉しさに何も答えられないでいる私に、ウィリアムがダメ押ししてくる。
彼のその不安げな微笑みは、今の私にとって何物にも代えがたい悪魔の果実。誰に指示されずとも、ルイスに促されずとも、答えなどとっくに決まっている。