【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
私はただ自分の本能に従いウィリアムに応えた。この胸の高鳴りを感じると共に――あなたと共に過ごしたい、と――精一杯の愛を込め、彼に微笑みかける。
するとウィリアムは、今度こそ心からの笑顔を見せた。とても柔らかい、優しい顔で。深い森の色を映し出したような美しい色の瞳で、私だけをじっと見つめてくれる。
その表情に、私は……。
ああ、きっと私はこの先、彼以外の誰が傷つこうと後悔しないだろう。ウィリアムと共にいられるのなら、他の全てを捨ててしまえる。たとえ期限付きの生活であろうと、束の間の幸せとわかっていても、その先の未来で、ウィリアムと別れることになろうとも……。
だって私は思い出してしまったのだから。彼に抱きしめられたときの、あの胸の高鳴りを。エリオットと愛し合った、あの幸福な日々を――。
ウィリアムへの熱い思いが溢れ出す。熱くて……熱くて、もうどうにかなってしまいそうなほどに――。そう思った瞬間だった。
突然視界が霞み、身体がぐらりと傾いた。
気付けば、どういうわけか私の身体はウィリアムに抱き留められている。
「どうした、大丈夫か?」
ウィリアムが私の顔を覗き込む、と同時に、私の額に当てられるひんやりとした手のひら。それはウィリアムのものではなく、ルイスのものだった。
「――っ」
驚いた私は、咄嗟に手を跳ねのけようとした。けれど、どうしても右手が上がらない。
ルイスはそんな私に、渋い顔を向ける。
「どうして言ってくださらなかったのです。酷い熱だ」
「熱だと……⁉」
「傷のせいでしょう。一昨日は川に落ちていらっしゃいますし……体力が落ちているのかもしれません」
ルイスの言葉に、私は妙に冷静な頭で思う。確かに、先ほどから傷が痛んでいたなと。
「ウィリアム様、もう少し隅に寄ってください」
「なぜだ……?」
「決まってるでしょう。こうするためですよ」
刹那――ルイスは語尾を強めると、ウィリアムの身体を無理やり隅に追いやった。
そして私の身体を――。
「失礼しますよ、アメリア様」
「――⁉」
――半ば無理やり、押し倒した。