【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
どちらにせよルイスは知ってしまったのだ。私が全ての人間に対し嫌悪を露わにするわけではないと。
そして同時に気付いたのであろう。お茶会での私の傲慢で冷酷な態度が偽りであったことに。そしてそれをウィリアムに進言した。
もしかするとルイスは、私がただの令嬢ではないことにも勘づいているのかもしれない。
「とにかく、このままじゃまずいわね……」
外堀を埋められてウィリアムと婚約――などとなってしまったら本当に取り返しがつかなくなる。もしそうなったら、彼の命は助からない。
ルイスについての情報はこれ以上手に入らない。彼がいったい何を考えているのかも、知りようがない。手札がないまま近付くのは危険だろう。
だがウィリアムにならば、まだ付け入る隙があるかもしれない。
「……こうなれば正攻法よ」
押して駄目なら引いてみろ。昔からそう言うではないか。お茶会では引いてしまったのが最大の敗因。ならば次は真っ向から断ろう。
ルイスのいないときを狙い、ウィリアムと二人きりになって直接断れば良い。今さら手段など選んでいられないのだ。
部屋のカーテンを開け放てば、木漏れ日が部屋に降り注ぎ、重苦しい空気が一瞬で霧散する。
「ウィリアム・セシル、待っていなさい。私があなたを決して死なせはしないわ」
私は己の心に刻みつける。何があろうと、絶対に彼を死なせはしない――と。