【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉

 彼女は再びウィリアムに問いかける。

「ご友人ですか?」
「……あ、ああ。――ええっと」
「わたしにも紹介してくださいませ!」
「…………」

 少女の無邪気な問いかけに、言葉を詰まらせるウィリアム――。
 どうやら答えを決めかねているようである。

 そんな二人のやり取りを眺めていたアメリアは、不意に少女の正体に思い当たった。

 ウィリアムと同じ栗色の髪やヒスイ色の瞳、整った顔立ち。その全てが、ウィリアムとよく似ている。だがウィリアムに妹はいなかったはずである。――ということは……。

「ご挨拶申し上げます、スペンサー侯爵令嬢。わたくし、アメリア・サウスウェルと申します。本日は素晴らしい(もよお)しにお招きいただき、大変光栄に存じます」

 ドレスの裾を持ち上げたアメリアが微笑むと、ウィリアムはようやくハッとした。
 そして何を思ったか――信じられないようなことを言い放った。

「カーラ、紹介しよう。彼女はサウスウェル伯爵家ご令嬢、アメリア嬢。――私の、お慕い申し上げている方だよ」
「――っ」

 刹那――ウィリアムの言葉に顔を赤く染めたのはアメリアではなくカーラの方だった。
 彼女は当然それが自分に向けられたものではないと知っていたが、それでも突然言われたその言葉に、驚かずにはいられなかった。

 なぜならウィリアムのその言葉は、紛れもない愛の告白であったのだから。
 ウィリアムのよく通る声は周辺の者にはっきりと伝わり、瞬く間に会場中に広まっていく。
 次第にヒソヒソと、アメリアに対する心ない言葉が囁かれた。
 けれど二人にそれを気にする素振りはない。それどころか二人は、周りの声など少しも聞こえていないかのごとく見つめ合う。――そこに、どこか不穏な空気を漂わせて。
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