【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
「……なぜ?」
「なぜかって? 理由など今は重要ではないわ。まずは誓って。理由はそれからよ」
「…………」
――選択の余地はない。
それにウィリアムには、その誓いを守れる確かな自信があった。
「わかった。誓おう。私はあなたを決して愛しはしないと」
「いいわ」
アメリアは微笑む。
「理由なんて単純よ。わたしには、心から愛する人がいるの」
「――え?」
それはウィリアムにとってあまりにも予想外の答えであった。と同時に平凡すぎる理由でもあり、思わず気の抜けた声を上げてしまう。
「ふふっ。ウィリアムあなた、わたしを何だと思っているの? わたしだって普通の人間よ。ルイスがあなたにわたしのことをどう伝えたのかは知らないけれど――」
アメリアの瞳が寂しげに揺れる。
「わたしが心を許したのはあの方だけ。だからわたしは他の誰とも一緒になる気はなかった。世間から顔を背けて生きてきたわ。――でも、いつまでもそうしてはいられない。そんなとき、あなたが現れた」
アメリアは続ける。
「わたしはあなたに縁談を取り下げさせるチャンスを与えた。けれどあなたは取り下げなかった。だからわたしはあなたを利用させてもらうことにしたのよ。その代わり、もちろんあなたもわたしを利用したいだけすればいい。わたしは完璧な夫人を演じてみせるわ。……これだけ言えば、わかるわよね?」
アメリアの皮肉な笑み。
ウィリアムはそんな彼女の表情に、どういうわけかルイスと重なるものを感じていた。
「わかった。だが一つ聞かせてくれ」
「何かしら」
「君の恋人は――今どうしている?」
ウィリアムの問いかけに、アメリアの瞳が再び揺らめく。
「――死んだわ」
「……ッ」
「ですから心配なさらなくとも、逢い引きなどしないわよ」
「そんな風には……」
――思っていない。