【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉

 彼女はクリスを見上げ懇願する。

「エド兄さまとブライアン兄さまが、アメリア様には良くない噂があるって。でも、それ以上教えてくれなくて。クリスお兄さまなら、知っているでしょう?」
「それを知ってどうする。ウィリアムに忠告でもする気か?」
「それは……内容次第ですわ」

 カーラはそう言いつつも、その言葉とは裏腹に躊躇(ためら)いがちに瞼を伏せる。
 そんな妹を、クリスは一瞥(いちべつ)した。

「カーラ、お前ももう十六だ。子供ではない。自分の品位を(おとし)めるようなことは考えるな。愛だの恋だのと、そんな不確かなものに(うつつ)を抜かすのは止めろ」
「……っ」

 兄のあまりにも冷たい言葉。そしてその憐れむような視線に、カーラはそれ以上何も言えずに押し黙るしかなかった。

 すると、エドワードとブライアンはそんな妹の姿を不憫(ふびん)に感じたのだろうか。カーラを庇うように兄クリスを睨みつける。

「兄さん、さすがにそれはないんじゃないか」
「ああ、言い方ってものがある」
「何だと? そもそもお前たちがそんな風に甘やかすから、カーラも分別(ふんべつ)が付かなくなるんだ。ウィリアムとて願い下げだろうな」
「な――、兄さん! 言っていいことと悪いことがあるだろう!」
「それ以上言ったら俺たちが許さないぞ!」

 二人はクリスを責めるが、けれどクリスは冷笑(れいしょう)するのみ。

「そういうことは一人前になってから言うんだな」

 馬鹿にするように吐き捨てて、弟らを飽きれた顔で見下ろすのだ。

 もはやエドワードとブライアンでは太刀打ち不可能な状況に思えた――そのときだった。
< 43 / 194 >

この作品をシェア

pagetop