【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉
彼女はクリスを見上げ懇願する。
「エド兄さまとブライアン兄さまが、アメリア様には良くない噂があるって。でも、それ以上教えてくれなくて。クリスお兄さまなら、知っているでしょう?」
「それを知ってどうする。ウィリアムに忠告でもする気か?」
「それは……内容次第ですわ」
カーラはそう言いつつも、その言葉とは裏腹に躊躇いがちに瞼を伏せる。
そんな妹を、クリスは一瞥した。
「カーラ、お前ももう十六だ。子供ではない。自分の品位を貶めるようなことは考えるな。愛だの恋だのと、そんな不確かなものに現を抜かすのは止めろ」
「……っ」
兄のあまりにも冷たい言葉。そしてその憐れむような視線に、カーラはそれ以上何も言えずに押し黙るしかなかった。
すると、エドワードとブライアンはそんな妹の姿を不憫に感じたのだろうか。カーラを庇うように兄クリスを睨みつける。
「兄さん、さすがにそれはないんじゃないか」
「ああ、言い方ってものがある」
「何だと? そもそもお前たちがそんな風に甘やかすから、カーラも分別が付かなくなるんだ。ウィリアムとて願い下げだろうな」
「な――、兄さん! 言っていいことと悪いことがあるだろう!」
「それ以上言ったら俺たちが許さないぞ!」
二人はクリスを責めるが、けれどクリスは冷笑するのみ。
「そういうことは一人前になってから言うんだな」
馬鹿にするように吐き捨てて、弟らを飽きれた顔で見下ろすのだ。
もはやエドワードとブライアンでは太刀打ち不可能な状況に思えた――そのときだった。